お寺に頼らないお葬式

禅のちょっといい噺

お葬式とは

お坊さんの私がそんなことを言ったら同業者から避難殺到するかもしれませんが、お寺に頼らなくてもお葬式はできます!

お葬式は家族の思いが一番大切だと思います。先祖代々のお墓がお寺にある場合は、ちょっと難しいかもしれませんが、もし都会に住んで特定のお寺の檀家でなければ、無理にお寺にお葬式をお願いしなくても大丈夫です。特定の宗教を信仰していない無宗教の場合は、なおさらお寺を呼ばないお葬式でも問題ありません。

もしあなたがどの寺にも属さずに檀家でなければ、たぶん葬儀社にお寺の紹介をしてもらうところから始まります。その時に、お寺にお葬式を頼まずにできる方法を聞いてみてください。そうすると、きっと葬儀社は、亡くなった方の生きた証をスライドショーにしたり、遺品に囲まれたお別れ会を提案してくれるでしょう。もしお父さんがガンダムのプラモデルが大好きで家にたくさんガンダムのプラモデルがあればそれを飾ったり、一緒にガンダムの映画を鑑賞したりするお葬式もいいと思います。

どんな送り方であれ、お葬式のかたちにとらわれずに、遺族が故人を惜しんでしっかりとあの世に送り出してあげることが大事です。戒名なども必要ないと思えばつけなくてもかまいません。自由なお葬式、故人が喜ぶお葬式を第一に考えましょう。

様々なお葬式のかたち

今は伝統的なお葬式以外にも様々なかたちで死者を弔うことができます。例えば、宇宙葬です。宇宙葬は、人工衛星に遺骨を収容して打ち上げます。禅では、宇宙と自分が一体になるというのが悟りと定義していますので、これはまさに理想的なお葬式と言えます。戒名や葬式そしてお墓に必要なお布施と比べても安く、約90万円ぐらいで宇宙葬が可能です。今まで、300人以上が人工衛星で打ち上げられているそうです。衛星は最長240年間 地球を周回します。残された人は、空を見上げると故人を偲ぶことができます。いつでも、どこでも、すぐに故人と繋がることができます。衛星の寿命が来ると、衛星は地球に落下する過程で大気圏で燃え上がり流れ星になります。

宇宙葬以外にも、遺骨からダイアモンドに加工して、家族が身につけられたり、遺骨を粉末にして海に流すこともできます。これからは、伝統的なお葬式以外にも多様化する供養のカタチと選択が益々可能になる時代が決ます。そうなると、お寺や住職の役目もこれまでとはだいぶ変わってきます。もしかすると、お寺、お墓、住職が不要になる時代もそう遠くはないかもしれません。あなたはどのようなカタチの供養を望みますか



高額なお葬式は不要

無理して高額な葬儀をする必要はありません。大切な人が亡くなった直後は、冷静に判断できません。葬儀社によっては、値段をグレーゾーンにして後から高額な費用を請求されてトラブルになることもあります。悲しみのなか何も知らない喪主が搾取されないように、高い価格のオプションや価格が曖昧なものは、まず断りましょう。例えば、棺桶は極端に言えば、アマゾンで売っている段ボール製の棺桶でも問題ありません。

誰でも例外なく、突然、身内に不幸が起きて、喪主になります。そんなとき、冷静に判断対応できる人はほとんどいません。何をしたらいいのかわからない状態で葬儀社の提案通りにしたら、何百万円もの請求書が届くこともあり得ます。特にご高齢の親御さんや重い病気で末期状態の身内がいる方は、お葬式の最低限の知識はしっかりと学んでおいたほうが良いと思います。

喪主となって一番最初に抱く基本的な疑問は、「何をしたらいいのか?」です。 そんな時、慌てることなく落ち着いてご葬儀を手配でき、逝去後の手続きまで喪主の行うべきことがしっかりとアドバイスされている、とても分かりやすい解説本です。

私の檀家にも、住職に相談せずに自分たちで葬儀社と決めてしまって、後にお寺に駆け込んでくる檀家もいます。駆け込んでくる檀家の相談は、ほとんどが、「見積もりと請求書の金額が違う」「葬儀社から包むように言われたお布施の金額が高すぎる」など、お金に関するトラブルです。

大切な親族を亡くして悲しみに打ちひしがれてるときに、冷静な判断はできません。また葬儀を安く済ませたいと願い出るのは「不謹慎」と思ってしまい、なかなか安いプランにしたいとは言いずらいのも喪主の心理です。

また、香典返しをいくらぐらいにしたらいいのか、相続の手続きなど、葬式が終わってもまだまだやらないければならないことはたくさんあります。

人によっては葬儀にかかった費用の一部を保険でまかなえたり、高額な医療費の一部を還付してもらえたりする制度もあります。保険証などは亡くなってから5日以内に返却しないと罰金や余計な保険料が発生することもあります。喪主が思いもつかない手続きがたくさんあることも忘れてはなりません。

四十九日の法要までの流れとやるべきこと、葬儀や葬儀後の手続きについては、事前に理解しておくと、偉材の時に慌てません。
例えば、初七日まではこんな感じのスケジュールになります。

・逝去当日
医師による死亡確認と死亡診断書の受け取り。
遺体の安置場所の確保と搬送、葬儀社選び、死亡届の提出、納棺など

・葬儀社との打ち合わせ(当日~3日以内)
喪主の決定。
葬儀の規模や形式、日時を決定し案内を出す。
戒名依頼、お坊さんに読経の依頼。お通夜の準備。

・お通夜~火葬~初七日法要(翌日以降~7日後)
お通夜、葬儀&告別式を取り仕切り。
出棺して火葬場へ移動。
骨上げ。
初七日法要。

身内の死は誰でもあまり考えたくないでしょうし、その時まで先延ばしにしたいという心理になるのは当たり前です。しかし遅いか早いかだけでいずれ向き合わなければならないことです。もし先延ばしにしてお金のトラブルや満足のいく形で送り出せないことになるなら、しっかりと時間的に余裕がある今から準備しておくことをおススメします。大切な人を失って心が動揺する状態のなか、冷静に対処できるように事前に喪主のマニュアルを学んでおくとよいと思います。