達磨大師の不安を取り除く方法

禅のちょっといい噺

1 不安を抱えている人へ

「もし〇〇になったらどうしよう…」
このように自分の心が自動操縦され、ずーっと悪いことを考え続けてしまうクセがある人は多いのではないでしょうか。
悪いことが続くと、もう悪いこと以外考えられなくなります。

悪いことしか考えらない原因が、「不安」です。

では、この厄介な「不安」を取除くにはどうしたらいいのでしょうか。
今回は、皆さんがよく知っている「ダルマさん」こと、禅の開祖である達磨大師の言葉をヒントに、不安の解決策を探ってみたいと思います。

人生どん底

人生どん底で死ぬことでしかその苦しみから抜け出せない、思いつめることもあるでしょう。

多忙による疲れや孤独感に悩んでいた時に、知り合いに勧められて軽い気持ちで覚せい剤に手を出してしまった元教師Aさんの話です。

Aさんは、初犯だったために執行猶予で刑務所には入らずに済みました。教師を辞めた後は、水商売の仕事を得て、何とか生計を立てていましたが、妊娠したことがわかると、店でも働けなくなり、男にも逃げられました。子どもを産んだ後、薬物を止められず再び逮捕されてしまいました。

Aさんの逮捕後の言葉です。
「自分は変わらなければならないし、変わりたい。でも弱い自分は変われない。弱い自分を何とかしたい。寂しいからすぐに誰かといっしょにいたくなる。でも私のようなどうしようもない女には、薬を売りつけるようなどうしようもない男しか寄ってこない。そんな男から薬物を勧められると嫌われたくないからつい手を出してしまう。自殺も考えたけど死ねなかった」

人生のどん底から救われた達磨大師の不安を取り除く方法

出所中にAさんは、刑務官から「達磨安心」と言う禅問答の話を教えてもらいました。
この話は、達磨大師と自分の腕を斬り落としてまで自分の覚悟をみせて弟子にしてもらった恵可との問答です。

    恵可「心が不安でたまりません。私に安心を与えてください」
    達磨「不安な心をもってきたら、安心させてあげよう」
    恵可「探しましたが見つかりませんでした」
    達磨「お前の不安なんて存在しないのだよ。安心しただろう」
    すると恵可は大悟した。

Aさんは「達磨安心」の話を聞いてこう思いました。
「薬物に手を出すのは不安を消すためだったけれど、そもそも薬物依存といった実態はなく、薬物に依存する外に不安を和らげる方法はないと勝手に弱い自分を作り上げていたことがわかりました」

その後、Aさんは様々な公的なサポートを受けながら、一生懸命に人生の再チャレンジに挑んでいます。同じ境遇で頑張っている人たちの集会にも参加して、よい友達を積極的に作っています。

Aさんは、今、不安はないそうです。もし不安な衝動に駆られたら、「達磨安心」の話を思い出して、不安は実態があるものではなく、自分の勝手な妄想であるということを自分に言い聞かせるようにしているそうです。